◇ご注文の多い先生◇
「〇〇先生はさ、ご注文が多いんだよねぇ…」
ある日、娘がしみじみと言いました。
ご注文?と思って話を聞いてみると、
「線からはみ出さないでください」とか
「順番を守って並びましょう」とか
どうやら“先生の指示”のことらしい。
なるほど、確かに。
「こうしてほしい」と言われること=ご注文。
間違ってはいない。
むしろ、妙に納得してしまいました。
うちの娘はよく立ち止まります。
朝の支度がのんびりだったり、
家を出る直前で話に夢中になったり、
電車の中で「あと何駅?」を何度も聞いてきたり
移動中も、よく立ち止まる。
(体感では1分おき)
そのたびに、
「なんでこんなに立ち止まるんだろう」
「うちの子、大丈夫かな」
「前に進んでる…?」
そんなふうに思っていました。
でも最近、少し見え方が変わってきました。
この子は「不安が強い」「緊張している」「繊細」なのではなく、「わかりたい気持ちが強い」のかもしれない。
***
娘はとにかく、よく質問をします。
「奇想天外って何?」
「校歌斉唱ってどういう意味?」
「あとどれくらいで着くの?」
ちなみに最後の質問に対しては、
時間で答えてもあまり意味がありません。
時間の感覚がまだふんわりしているので。
娘は、「あとどれくらい?」と聞いてきます。
自分が数えられるものに置き換えて、
なんとか見通しを持とうとします。
これを「不安」と呼ぶこともできるけれど、
最近は「工夫」と呼びたくなってきました。
***
言葉の使い方も、なかなか自由です。
優しくしてくれるクラスメイトのことを「お姉ちゃん」と呼ぶ。
年齢は同じ。完全に同級生。
でも娘にとっては、「優しい人」=お姉ちゃん。
これもまた、間違いではないのかもしれません。
世界を、自分なりに説明しようとしている途中なのだと思います。
***
そんな娘を見ながら、私は気づきました。
私はどちらかというと、
「分からなくても、まあいいか」でいられるタイプです。
一方で娘は、分からないままにしておくことが少し苦手。
だからこそ、知ろうとするし、聞こうとするし、頻繁に立ち止まる。
でも最近は、その立ち止まり方も少しずつ変わってきました。
以前は小学校の前で固まっていたのに、
今は少し考えてから、すっと入っていく日も増えてきました。
きっと、先生やお友達のおかげで、「わかる」が増えてきているのだと思います。
***
そして、もうひとつ気づいたことが。
娘が言っていた「ご注文の多い先生」
実はその先生は、隣のクラスの、ベテランの先生です。
それを聞いたとき、なんだか妙に腑に落ちました。
ああ、この「ご注文」、
きっと長い時間をかけて磨かれてきたものなんだな、と。
何をどの順番で伝えれば、子どもが動きやすいのか。
どこまで言えば伝わるのか。
どのルールが、子どもたちを守るのか。
その一つひとつを積み重ねてきた結果が、
あの“ご注文の多さ”なのかもしれない。
***
わかりたい娘にとって、
「先生のご注文」は、きっと、大きな助けになっている。
だから私は、あの言葉を少しだけ言い換えてみたくなった。
ご注文の多い先生、ではなくて、
「わかるを増やしてくれる先生」。
***
現場の先生の“ご注文”と
分かろうとする子ども。
そのあいだで、今日もたくさんの「わかる」が生まれているのだと思います。
感謝ばかり。