◇子どもの時計は慌てない◇

今は、二十四節気の啓蟄(けいちつ)。

冬のあいだ土の中で眠っていた虫たちが、春の気配に誘われて、そろそろ動き出す頃だと言われています。

虫たちはきっと、カレンダーや時計を見て外へ出てくるわけではありません。

土のぬくもりや空気のやわらぎを感じて、静かに動き出すのでしょう。

その姿を思うと、ふと感じることがあります。

子どもの時間も、きっとそれに近いのではないかと。

我が家には、まだ時計の読めない子どもがいます。

「あと5分ね」と言っても、その〝5分〟は、まだ分かりづらいものがある。

だから我が家では、時に時間の単位をこんなふうに伝えています。

5分は「ペネロペくらい」

15分は「ブルーイ2つぶん」

30分は「おさるのジョージ」

2時間は「ぽにょの映画」

子どもは、数字ではなく出来事で時間を感じているのかもしれません。

道を歩いていると、子どもはよく立ち止まります。

そして気がつくと、急にしゃがみこんで小さくなっている。

『またか』と思って覗いてみると、小さな石だったり、きらきらした破片だったり。

大人にとってはただの道でも、子どもにとっては宝物や発見が落ちている場所なのかもしれません。

靴を履くのに時間がかかったり、道ばたで立ち止まったり。ずっと余計に思える話を夢中になってしていたり、、、。

大人はつい「急いで」「今はそれじゃなくて…」と声を掛けてしまいます。

子育てをしていると、先のことも気になります。

『ちゃんとできるかな。』

『間に合うかな。』

『大丈夫かな。』

そんな思いに、心が少しだけ慌ててしまう日もあります。

けれど、子どもにはきっと、その子なりの時計があります。

見えないところで準備をして、

その子のタイミングで、そっと一歩を踏み出す。

子どもの時計は、慌てません。

少し前に道ばたでしゃがみこんだ娘が、嬉しそうに言いました。

「てんとう虫いるよ!」

小さなを見つけて、そっと捕まえようとしていたのです。

そういえば今は、啓蟄の頃。

土の中や葉っぱの裏で眠っていた虫たちも、春の気配に気づき始める頃です。

子どもはきっと、慌てていないので、大人より少しだけ目聡く、春を見つけられるのかもしれません。